クソしかいねー世

クソしかいねー世に愛を叫ぶ

農家でバイトを始めた男【環境/歴史編】

先月から始めた、さつまいもの収穫バイトについて語ろうと思う。

 
農家でバイトを始めるに至った動機などについては前回のエントリ(農家でバイトを始める男 - クソしかいねー世)を参照のこと。
 
今回は、バイト先となる干し芋屋が近所にあった理由を述べたい。
皆さんが農業でバイトをするときの手掛かりになれば幸いである。
 
 

環境

まず、さつまいもの生育環境についてまとめておこう。
(温度について)
さつまいもの生育適温は15~38℃とか22~30℃とか22~33℃とか言われていてはっきりしない上に、品種によって異なるとかあるらしいが、どの本やネットの情報でも25~30℃程度の高温が必要であるということでは一致している。
また、生育期間の積算温度が3000℃以上必要ということでも一致しており、暖かい地域が栽培に向いているっぽい雰囲気がある。
しかし、35℃以上の高温になると逆に育たなくなるらしい。
(土壌について)
乾燥に強く、砂地、火山灰土、傾斜地などでも育つ。
痩せた土地でも育つ強い作物である。
滞水、冠水害には弱いため、排水性が良くないといけない。
(日照について)
1日あたり12~13時間が生育には最適という話もあるほど、日当たりは良い方がいいらしい。
 
さて、それでは僕が住む町を紹介しよう。
僕が住む町は、遠州灘(太平洋)に面した田舎町だ。
海まで車で5分、静かな時には波の音が聞こえてくることもある。
そんな我が町の畑と言えば、砂地畑がほとんどで土の畑はあんまりない。
砂の畑が土の畑と違うところは、水はけが良いことだ。
すなわち、水はけが良いので多湿を嫌う農作物を育てやすい。
さつまいもは湿度に弱いので、水はけのよい砂地畑での栽培は望ましい。
また、海に近い砂地なので温度が高い。
真夏の砂浜を想像してみてほしい。照り返しがキツくて、アッツアツな砂浜は素足で歩けないだろう。
さらに、我が町の日照時間は全国的にもトップクラスである。
以上のこと(温度の高さ/排水性の高さ/日照時間の多さ)から、海辺の痩せた土地しかない我が町ではさつまいもが好んで作られているのである。
 
 

歴史

我が町において、さつまいもは在来作物である。
歴史的には江戸時代中期の明和3年(1766年)に遡る。
御前崎沖で薩摩藩の御用船「豊徳丸」が座礁したときに、その船員24名を大澤権右衛門が救出した。権右衛門は薩摩藩からの謝礼金20両を断り、3個のさつまいもを譲り受けた。
っていう始まりから、作物の栽培が難しい海岸地帯でもよく育つさつまいも栽培が広がっていった。
上記で示したように、生育環境に申し分がなかったので根付いたのだろうと推測できる。
 
 

干し芋製造が盛んな理由

さつまいも栽培が定着した理由は説明した通りだが、なぜ干し芋製造が盛んになったのかをここでは説明する。
我が町において、というか静岡県西部の遠州灘沿岸地域において、冬は「遠州のからっ風」と呼ばれる強風が吹く。
遠州のからっ風、体感温度が数度下がる程度に強い風である。
そのため、芋を干してもすぐに乾くし、干し芋製造に良い環境だと言われている。
それを知ってか知らずか分からないけど、1800年代半ばに御前崎羽村の栗林庄蔵が干し芋を考案した。
そう、私が住む静岡県は干し芋発祥の地なのである。
現在では干し芋といえば茨城県が有名になっているけれど、我が町にも質の高い干し芋を作っている農家はたくさんあるのだ。
 
 
以上のような我が町の環境/歴史を踏まえて、在来作物に関わるバイトを始めたのだった。
皆さんにおいても、自らの住む町の土地の性質や気象の特徴を理解することで農作物への理解を深められると思う。
自分の町の名産など、是非調べてみていただきたい。 意外と知らないことがあって面白いのではないかと思います。