映画好きなわけじゃないけどミュージカル映画はわりと好き
好きになったのは、「RENT」っていう映画がきっかけだった
当時は大学生で、何となく人生が拓けたような感じがしていた
社会の大きさと人間の多様さと自分の自由さを何となく感じていた
高校生とは違う、明確に違う何かになり、何かが眼前に広がっていた
でもそれは何となくなだけで、自分は具体的な何者かではなかった
何となく自分は何者かになるんだろうという漠然とした信仰があり
何となく何者かにならなければいけないという散漫な義務感があった
しかし、社会経験も知識も教養も人付き合いも何もかもがなかった
だからこそ、自分が何をしたいのかすら良く分かっていなかった
ただ、僕は数学をしたくて大学に行った
だから、数学をするだけの大学生活だった
そんなよくある大学生活の中で、若気の至りみたいな生活の中で見た映画が「RENT」だった
アパートの家賃(RENT)が払えない貧乏生活を送りながらも夢を追う若者を描いている作品だ
売れない歌手、売れない映像作家、とにかく貧乏だけど成功する夢を持っている登場人物たち
彼らの周りを支えるのはレズの元カノとかHIVポジティブ同士のゲイカップル等の個性的な面々
エイズ、ドラッグ、同性愛が溢れるニューヨークを舞台に、愛と命について考えさせられる映画だ
衝撃を受けたのは、
キャラクターとか物語とか舞台とか、
映画の全て、本当に全てなんだけど、
とにかくこれを聞いて欲しい!
Seasons of Love - Rent (Music Video) - YouTube
Five hundred twenty-five thousand Six hundred minutes
How do you measure
Measure a year?
「52万5600分を、1年を、どう数えよう?」
In daylights, in sunsets
In midnights, in cups of coffee
In inches, in miles
In laughter, in strife
「夜明け、夕焼け、真夜中、コーヒーの杯数、インチ、マイル、笑顔、争いで」
In five hundred twenty-five thousand
Six hundred minutes
How do you measure
A year in the life
「52万5600分という人生の一年を、どうやって計ろう?」
How about love?
Measure in love
Seasons of love
「愛はどうだろう
愛で測ってみよう
愛という季節で」
たったこれだけの歌詞に、たったこれだけの歌に、当時の僕はやられた
大学2年生の終わり頃だった
目標も目的も気力も何もかもなく、何となく数学していた
いや、嘘をつかずに正直に言うなら、数学さえしていなかった
50万分以上を、本当に、ただ何となく過ごしてしまっていた
クソみたいな季節を巡り、クソみたいな人生を送っていた
理由もなく講義をサボり、年間を通して20単位も取れなかった
だから、僕は一念発起した
1年以上、惰性で続けていたバイトを辞めた
バイトしすぎて単位を落としていたし、得るものはもう何もなかった
当時付き合っていた彼女に意味不明がられながら、ラブホの門を叩いた
月曜〜金曜はフルコマで講義を取って、17時〜24時はラブホでバイト
大学3年の1年間、1つも単位を落とさず何とか4年生に上がることができた
本気で授業を受けたから、4年のゼミは楽しかったし院に行く決心もした
それからの僕は、1年をクソみたいに過ごすのは辞めた
クソしかいねー奴らに合わせて、クソみてーな価値観で、
クソみてーな生き方をするのは辞めた
1年を測るのは自分自身であり、クソみてーな社会じゃなかった
だから僕は、僕の尺度で生きていきたいと今も昔も思っているんだ
君の尺度ではなく
君という任意の他者に、概念に、集合体に、僕は惑わされたくない
だから、もし、君が死んでしまったなら
君が死んでから1年経つなぁ……なんて、そんな感慨は持ちたくない
僕は君という、社会という、同類を、同志を、敵を、クソを、
振り返りながら省みながら思い出しながら生きていきたくない
だから、君は君で1年を数えていってほしい
僕とは違う道を歩む君の、これからの素晴らしき人生を祈って
間違っても僕に「君が死んでから何年」なんて思わせないで欲しい
君は君のまま、折れず変わらず自信を持って、このクソしかいねー世の中を
クソしかいねーと見せかけて、たまには面白い奴がいるこの世の中を、
どうか無事に渡っていけますように
僕はそれだけを祈っている